小説

誰彼(法月綸太郎)感想

作品紹介 著者の前作である「雪密室」から続く、小説家法月綸太郎シリーズの続編がこの『誰彼』だ。 本作は、表題が示す通り「誰が」という点にスポットを当てて描かれており、密室殺人の解に拘った前作とは毛色が違う作品になっている。 感想(少しネタバレあり) この作品の面白さはジェットコースターさながらのストーリー展開にあると思う。 状況が目まぐるしく変化していくため、その都度探偵役の法月綸太郎が混迷し、当然読者も一緒に振り回される形になる。なかなか事件の真相が見えて来なく、常に先のページが気になる展開であるので、読者はいつの間にかストーリーに没入してしまう。 ただ人によっては、この作品にある変化の多さをやり過ぎだと感じてしまうかも知れない。どうしても繰り返し変化が起きると、人は飽きたり疲れたりしてしまいがちだ。 ジェットコースターを例にあげよう。ジェットコースターというのは乗っている間は楽しいアトラクションであるが、何度も繰り返して乗りたくはない乗り物ではないだろうか。 それは度重なる変化に、それまで面白いと感じていた身体が、変化に慣れてしまう事が原因であると
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アクロイド殺し(アガサ・クリスティ)感想

作品紹介 作品のメインの視点はシェパードという医者を生業とする一人の男。この人はなんというか、一応物語のメインであるにもかかわらず他の人物と比べて個性が薄いような気が。 典型的な生真面目さんというか、とにかく言葉を選ぶのにも慎重で感情の抑揚もあまりないように見える。 「仮にもメーンなんだから、最後にはデカイ仕事してくれるだろう」そう思い読み進めていましたが。。彼はやっぱりデカイことをしてくれましたね。まあ彼の功績は読んでみてってことで。 なんか人物紹介になってしまった。 感想(少しネタバレあり) なんだかんだで、かなりの衝撃を受けた作品。 「そして誰もいなくなった」を読んだときも感じたが、、この人はキャラの個性を作るのが上手。 よくよく考えれば、個性が強い人間が揃う今作に置いて、シェパード医師の「普通に堅実な感じ」は個性として充分成り立つように思う。 期待を裏切らない活躍っぷり。シェパード医師は「主人公」としての役割を十二分に果たしてくれた。 そして、シェパード医師と双璧を成す、アガサ作品においての重要人物であるポワロ氏。このポワロというキャラ
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鍵のかかった部屋(貴志祐介)感想

貴志祐介氏の「鍵のかかった部屋」を読了。 いかにも密室っぽいタイトルの本作は短編集となっていて、出勤時とかに読むのにちょうど良い。 作品紹介 本作は密室殺人を取り扱った短編が4本収録されている。 「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」いずれもキーパーソンとなるのは、やたらと「鍵」に詳しい男、榎田と女性弁護士である青砥。 この二人が事件に関わることで、いかにも自殺に見える殺人の実態を暴いていく、というのが本作共通の筋となる。 感想(少しネタバレあり) 何も知らずに読んだ自分としてはこの二人がキーパーソンである事は三作目の「歪んだ箱」辺りで分かったわけだけど、これらの中でも一作目の「佇む男」はかなり自分好みのシチュエーシだった。 人里離れた山荘で資産家の社長が遺言を残し自殺した事件の裏を探るお話。密室の状態も、トリックもなかなか楽しめた。 犯人はハナから明確だったし、トリック自体もよみ易かったりするので、考えを巡らせながら読む楽しさが味わえるかと思う。 二作目以降のお話もなかなか面白くはあったけれど、徐々に物足りなく感じてしまった
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99%の誘拐(岡嶋二人)感想

岡嶋二人著『99%の誘拐』を読了。 「コンピューターを駆使して誘拐事件をコントロールする」という一風変わったテーマで進行するストーリーは軽快で読みやすく、純粋に娯楽小説として面白いものになっている。 岡嶋二人らしいアイデアと展開力が光る作品だ。 作品紹介 あらすじに触れよう。ストーリーの肝となるのは、表題通り誘拐事件。 とある企業のお偉いさんの孫が誘拐され、身代金と引き換えに孫は返す、という一見ありがちなシチュエーションの誘拐事件である。 しかし、犯人の要求が特殊で、現金をダイヤモンドに変えて差し出せと言うのだ。何故ダイヤモンドなのか。 理由は分からないが、とにかくダイヤモンドを犯人の指定した場所へ運ばなければ、子どもは返って来ないので、奇妙に思いながらも関係者たちは犯人の要求通りに動くこととなる。 そしてこの事件に巻き込まれるうちに、ある関係者の脳に過去の映像が浮かびあがる。そう、過去にも同じような誘拐事件が起こっているのだ。……と、あらすじはこんな感じだ。 感想(少しネタバレあり) この作品の見るべき点は、何故この誘拐事件が起こったのか、
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スイス時計の謎(有栖川有栖)感想

有栖川有栖著『スイス時計の謎』を読了。 四つの短編を収録した本書だが、なんといっても表題作の「スイス時計の謎」が面白かった。 もうこれを読むだけの為に本書を手にとって良いとさえ思ってしまってしまう位である。 もちろん他作も面白くはあるのだが、「スイス時計の謎」を本書の最後に持ってきているためか、やや印象が薄い感があった。 作品紹介 表題作「 スイス時計の謎」では、学生時代の友人サークルのメンバーが記念として揃えて着けている、スイス製の腕時計がキーアイテムとなっている。 その内の一人が殺害されることでメンバーに疑いが懸かるわけだが、その殺害現場に残る重要な証拠として挙げられたのが時計だったのだ。だから「スイス時計の謎」。タイトル付けは至ってシンプルである。 感想(少しネタバレあり) この作品は推理が美しいと思う。 一つ一つ状況を整理し「犯人ならここはこうするだろう、だからそうする必要がないであろうあなたは犯人からはずれる」というような逆説から犯人を絞っていき最終的に一人を導きだす推理シーンはなかなか見応えがある。 また、読者を置き去りにすること
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迷宮遡行(貫井徳郎)感想

貫井徳郎著『迷宮遡行』を読了。 どうやら著者の過去作である「烙印」を大幅に書き直したものが本作であるよう。 ただ、実を言うと、この作品を読み終えて、法月綸太郎の解説を読んでその事実を知ったくらいなので、「烙印」は未読だったりする。まあそういう経緯があるということで。 解説に「烙印」と「迷宮遡行」の違いなんかが書いてあったのでそのうち読んでみたいとは思っているが、本音を言えば、出来れば先に読んでおきたかったなあと。 作品紹介 妻が突然居なくなったので探し回ってたら、なんだか危険な闘争に巻き込まれていた。 …という非常に分かり易いストーリー運びの本作。 失業して奥さんに逃げられてなんて踏んだり蹴ったりな状況にある主人公迫水。 そんな状況にあるクセにマイペースを崩さない謎のメンタルを誇る彼は、なんと警察さんのエリートの兄を持っていたりする。 しかも、彼の親友も警察。そして迫水は失業中。基本的にダメな感じの主人公なのである。 しかし、そんな彼は、なぜだか綺麗な奥さん(なお未入籍)をゲットしてしまう。彼が奥さんを見つけ出すために奔走する姿は、あるときには
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どんどん橋、落ちた(綾辻行人)感想

綾辻行人著『どんどん橋、落ちた』を読了。 短編集ではあれど、どの作品のかなり楽しめ、本当の意味で娯楽という感じの作品だった。 作品紹介 『どんどん橋、落ちた』は、収録されてる5作中4つの作品において、「作者からの挑戦」が入るフーダニット作品集になっている。 一番最後に収録されている「意外な犯人」こそやや毛色が違うものの、一貫して「犯人は誰か」焦点を当てている。ゲーム感覚で読める楽しい作品だ。 感想(少しネタバレあり) 本格派ミステリを手軽に楽しめる一冊という印象。どの作品においても筋が通った推理、予想外の事実があり、短い作品ながら充分に面白く読めるはず。 個人的に好きなのは、表題作の「どんどん橋、落ちた」のような、思わず笑ってしまうような作品群の中で、唯一「ワラエナイ」結末を迎える「伊園家の崩壊」。 他の作品は推理に必要な情報以外は必要最低限で書かれているように思うし、問題が分かりやすくなっているのだが、この作品はちょっと捻られており、さらに難しい。 「伊園家で勃発したこの奇妙な殺害事件の犯人は誰か?」 と、質問自体は他の作品とそんなに変わら
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頼子のために(法月綸太郎)感想

法月綸太郎著『頼子のために』を読了。 自分は小説家法月綸太郎シリーズを順序よく読んできているが、この『頼子のために』は、過去作と比べるとだいぶ読ませる内容になっているという印象を受けた。 この「トリック凄いなあ」というより、純粋に「面白い」といえるミステリー小説になっていると印象を受けたし、恐らく多くの人が同じように感じるのでは?と思っている。 作品紹介 著者自身の名を冠する法月綸太郎シリーズの第3作目の作品で、シリーズ最高傑作と名高い作品である。 シリーズものではあるが、このシリーズの前の作品である「雪密室 」「誰彼 」を読まなくても楽しめるので、本作が気になった方は此処から読んでも問題ないと思う。 割と作品全体の空気感が重いので、ある程度の心の準備があったほうが良いかも、という側面もあり。 感想(少しネタバレあり) ストーリーに凝っているぶん、ラストシーンで明かされる事実が結構な破壊力がとんでもない。 事故が原因で体が不自由になった妻、事故の引き金となった人物を恨み続けて生きてきた夫、若くして殺害されてしまった娘。結局のところ、誰一人として相
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魍魎の匣(京極夏彦)感想

京極夏彦著『魍魎の匣』を読了。上中下巻併せて1000Pを超えるボリュームで語られる本作は、全体的に和風で妖しげな雰囲気を放っており、個人的にはかなり好みのテイストだった。 作品紹介 本作品「魍魎の匣」(もうりょうのはこ)は、京極夏彦の百鬼夜行シリーズの第2弾であり、第49回日本推理作家協会賞の受賞作品となっている。 メディアミックス作品が多い作品であり、映画化、アニメ化もしている人気作品だ。 シリーズの主人公が営む古本屋の屋号から、京極堂シリーズとも呼ばれているので、人によってはこっちの方が馴染みあるかも知れない。 感想(少しネタバレあり) 本作は、とにかくストーリーの運び方が絶妙だと思う。序盤は淡々と語られていき、ゆっくりと時間をかけて読者を作品に引き込んでゆく。 序盤で、特に印象に残ったのは、物語が始まる鍵となった二人の少女の心理描写が細かく描かれている点。同棲の友人に対する、憧れ、羨望、友人である事への喜び、誇り……少女の不安定な心の動きは、見ているだけで読者の不安を煽り、良くないことが起こる予兆を感じさせるものであったし、そうなれば自然と先が読み
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十角館の殺人(綾辻行人)感想

1987年に出版された綾辻行人氏の処女作。この「十角館の殺人」はミステリファンの中でも極めて人気であり、処女作ながら綾辻氏の代表的な作品となっている。 Anotherなどのメディアミックス作品もあるので、知っている人は多い作家の一人かと思う。 作品紹介 本作の舞台は、角島と呼ばれる無人島だ。とは言ってもつい半年前までは人が住んでおり、殺人事件が起きた事で無人となってしまったのである。 そんな事件が起こったことを知りつつ、興味本位でその無人島に建てられた「十角館」へ。大学生の推理小説研究会のメンバーが赴くところからストーリーが始まる。 クローズド・サークルが好きな人なら、ここまでで興味が湧くはず! 感想(少しネタバレあり) 読後の感想を一言で言うなら「面白い」。本当に面白かった。500pを超える長編でありながら、ある種長編のデメリットになりうる、まどろっこしさを全く感じさせない。 一週間という短期間の中で次々と起こっていく事件、会話のテンポの良さ、個性的で役割を持ったキャラクタが読者のページを捲る手を加速させていく。 無人島、館、とミステリの定番で
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