迷宮遡行(貫井徳郎)感想

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貫井徳郎著『迷宮遡行』を読了。

どうやら著者の過去作である「烙印」を大幅に書き直したものが本作であるよう。

ただ、実を言うと、この作品を読み終えて、法月綸太郎の解説を読んでその事実を知ったくらいなので、「烙印」は未読だったりする。まあそういう経緯があるということで。

解説に「烙印」と「迷宮遡行」の違いなんかが書いてあったのでそのうち読んでみたいとは思っているが、本音を言えば、出来れば先に読んでおきたかったなあと。

書籍情報

           
タイトル迷宮遡行
著者貫井徳郎
出版社朝日新聞出版
発売日2022年03月07日頃
商品説明突然、妻・絢子が失踪した。その理由がわからないまま失業中の迫水は、思いつくかぎりの手がかりを辿り妻の行方を追う。そもそも彼女は一体何者なのか?人間の不確かさを描く、貫井作品の魅力が凝縮された傑作ミステリの新装版。
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目次

作品紹介

妻が突然居なくなったので探し回ってたら、なんだか危険な闘争に巻き込まれていた。

…という非常に分かり易いストーリー運びの本作。

失業して奥さんに逃げられてなんて踏んだり蹴ったりな状況にある主人公迫水。

そんな状況にあるクセにマイペースを崩さない謎のメンタルを誇る彼は、なんと警察さんのエリートの兄を持っていたりする。

しかも、彼の親友も警察。そして迫水は失業中。基本的にダメな感じの主人公なのである。

しかし、そんな彼は、なぜだか綺麗な奥さん(なお未入籍)をゲットしてしまう。彼が奥さんを見つけ出すために奔走する姿は、あるときには凄く格好良く見えるし、またあるときは滑稽にも映る。

人情味溢れる作品だ。

感想(少しネタバレあり)

非常にシンプルで読みやすく、面白くはあるのだが、妻失踪の真相は正直なところさほど驚けないし(実際に聞いたら滅茶苦茶ビックリする話ではあるが…)、全体的にしりすぼみしてしまっている印象。

だが、ストーリーの締め方は個人的に好み。著者の処女作である『慟哭』は感情が堰を切ったように流れたが、こちらは少しづつ漏れていった怒りやら悲しみやらが、最後の瞬間に無くなってしまうような印象を受けた。

どちらも共通して辛い終わり方ではある。しかし『迷宮遡行』においては人間の力強さを感じられない最後を迎える。

本当に、全てを失った悲壮感しかなかった。ストーリーの特性上、かなり非現実的なことばかりではあるが、主人公迫水のマイペースな表情の裏側は、限りなくリアルに近いものだ。

本音を言えば『慟哭』の方が面白かった。が、人間の脆さを描いた『迷宮遡行』も充分評価できる作品だと思う。「二作目のプレッシャー」を乗り越え、リメイクまでしてこれを描いた著者に乾杯。

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