取っ付きやすさ:
トリック:
ストーリー:
法月綸太郎著『頼子のために』を読了。
自分は小説家法月綸太郎シリーズを順序よく読んできているが、この『頼子のために』は、過去作と比べるとだいぶ読ませる内容になっているという印象を受けた。
この「トリック凄いなあ」というより、純粋に「面白い」といえるミステリー小説になっていると印象を受けたし、恐らく多くの人が同じように感じるのでは?と思っている。
書籍情報
タイトル | 新装版 頼子のために |
---|---|
著者 | 法月 綸太郎 |
出版社 | 講談社 |
発売日 | 2017年12月15日頃 |
商品説明 | 「頼子が死んだ」。十七歳の愛娘を殺された父親は、通り魔事件で片づけようとする警察に疑念を抱き、ひそかに犯人をつきとめて刺殺、自らは死を選ぶーという手記を残していた。しかし、手記を読んだ名探偵法月綸太郎が真相解明に乗り出すと、驚愕の展開が。著者の転機となった記念碑的作品。長く心に残る傑作! |
画像 |
※書籍情報は楽天ブックス書籍検索APIを利用して表示しています。
作品紹介
著者自身の名を冠する法月綸太郎シリーズの第3作目の作品で、シリーズ最高傑作と名高い作品である。
シリーズものではあるが、このシリーズの前の作品である「雪密室 」「誰彼 」を読まなくても楽しめるので、本作が気になった方は此処から読んでも問題ないと思う。
割と作品全体の空気感が重いので、ある程度の心の準備があったほうが良いかも、という側面もあり。
感想(少しネタバレあり)
ストーリーに凝っているぶん、ラストシーンで明かされる事実が結構な破壊力がとんでもない。
事故が原因で体が不自由になった妻、事故の引き金となった人物を恨み続けて生きてきた夫、若くして殺害されてしまった娘。結局のところ、誰一人として相容れなかったんだなと思うと気が滅入る。
そして何より、一番歩み寄ろうとしていたのは殺害された娘、頼子であったという事実が重くのしかかる。後味が悪いことこの上なし。
ただ、それだけ後味の悪さを感じるのも、物語において人物描写が良くできているからだろう。
また、探偵法月綸太郎の立ち位置が絶妙に思う。
本作は既に事件が終わっている状態で真相を探るというスタンスだ。世間的には犯人も判っているし、これ以上犠牲者が出ることもないのである。
では何故、法月は真相を知って犯人を糾弾しようとしたのか。表題を見直してみよう。本作において頼子のことを一番理解しようとしたのは誰だったか。頼子のために行動したのは誰だったか。
……と、この作品における法月綸太郎というキャラクタは大いに読者の共感を呼ぶことだろう。
なんだか鬱々しい感じに書いてしまったが、魅力的な作品であるのは間違いなしだ。