誰彼(法月綸太郎)感想

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法月綸太郎著『誰彼(たそがれ)』を読了。

書籍情報

           
タイトル誰彼 新装版
著者法月 綸太郎
出版社講談社
発売日2021年01月15日
商品説明密室から消えた教祖。マンションで発見された首のない死体。犯行声明電話が告げたのは、消息不明の革命家の名。だが、その死にざまは、教祖に送られた脅迫状の通りだった。死んだ男は誰なのか。首はなぜ持ち去られたのか。探偵・法月綸太郎がくりだす推理が事件をさらに複雑化する、多重推理ミステリの名作。
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目次

作品紹介

著者の前作である「雪密室」から続く、小説家法月綸太郎シリーズの続編がこの『誰彼』だ。

本作は、表題が示す通り「誰が」という点にスポットを当てて描かれており、密室殺人の解に拘った前作とは毛色が違う作品になっている。

感想(少しネタバレあり)

この作品の面白さはジェットコースターさながらのストーリー展開にあると思う。

状況が目まぐるしく変化していくため、その都度探偵役の法月綸太郎が混迷し、当然読者も一緒に振り回される形になる。なかなか事件の真相が見えて来なく、常に先のページが気になる展開であるので、読者はいつの間にかストーリーに没入してしまう。

ただ人によっては、この作品にある変化の多さをやり過ぎだと感じてしまうかも知れない。どうしても繰り返し変化が起きると、人は飽きたり疲れたりしてしまいがちだ。

ジェットコースターを例にあげよう。ジェットコースターというのは乗っている間は楽しいアトラクションであるが、何度も繰り返して乗りたくはない乗り物ではないだろうか。

それは度重なる変化に、それまで面白いと感じていた身体が、変化に慣れてしまう事が原因であると思う。身体が変化に飽きてしまうのだ。そうならない為か、ジェットコースターは比較的短い時間で発車位置に戻ってくるように設計されている。

自分が言いたいのは、この手の変化が多い作品も同様に、尺を短めにした方が楽しめるのではないかと言う事。

何度も「これだ、いや違う」を繰り返す事に飽きてしまう読者も少なからずいると思う。人によってどの程度まで許容できるかは異なるのであろうが、それにしてもやや冗長だったと言うのが本作の印象だ。

しかし、その長い分複雑になった事件の様相を、最終的に綺麗にまとめたのが著者の凄いところでもある。

ここまで自分で書いていてこんな事を言うのはおかしいと思うが、ジェットコースターとか最早どうでも良くなる位凄い。あそこまでグワングワン揺らすと、著者側も揺れそうな気がするが、そんな事は一切なくラストを演出している。

この作品を読んで唯一もやが残ったのは、驚きの連続を自身の中でどう捉えていいか、と言うところか?

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