99%の誘拐(岡嶋二人)感想

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取っ付きやすさ:
トリック:
ストーリー:

岡嶋二人著『99%の誘拐』を読了。

「コンピューターを駆使して誘拐事件をコントロールする」という一風変わったテーマで進行するストーリーは軽快で読みやすく、純粋に娯楽小説として面白いものになっている。

岡嶋二人らしいアイデアと展開力が光る作品だ。

書籍情報

           
タイトル99%の誘拐
著者岡嶋 二人/西澤 保彦
出版社講談社
発売日2004年06月15日頃
商品説明末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。そこには八年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。その犯行はコンピュータによって制御され、前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。第十回吉川英治文学新人賞受賞作。
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目次

作品紹介

あらすじに触れよう。ストーリーの肝となるのは、表題通り誘拐事件。

とある企業のお偉いさんの孫が誘拐され、身代金と引き換えに孫は返す、という一見ありがちなシチュエーションの誘拐事件である。

しかし、犯人の要求が特殊で、現金をダイヤモンドに変えて差し出せと言うのだ。何故ダイヤモンドなのか。

理由は分からないが、とにかくダイヤモンドを犯人の指定した場所へ運ばなければ、子どもは返って来ないので、奇妙に思いながらも関係者たちは犯人の要求通りに動くこととなる。

そしてこの事件に巻き込まれるうちに、ある関係者の脳に過去の映像が浮かびあがる。そう、過去にも同じような誘拐事件が起こっているのだ。……と、あらすじはこんな感じだ。

感想(少しネタバレあり)

この作品の見るべき点は、何故この誘拐事件が起こったのか、目的は何か、という所にあると思う。コンピューターを利用したトリックも良くできていて面白いのはもちろんとして、この事件の裏側にある人間味が個人的に響いた。

著者の作品の一つ『クラインの壺』を読んだときにも感じたことだが、岡嶋二人は作品に何らかのメッセージを込めているように思う。

双方に関わった人物たちの生みだしたストーリーの結末はどこか感傷的で、不思議な気持ちにさせられる。同じように過去に縛られて生きてきた男たち。

今作のメッセージは実際に手に取り確かめて欲しい。

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