慟哭(貫井徳郎)感想

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作品紹介

貫井徳郎の処女作であり、代表作でもある「慟哭」。 

連続幼女誘拐事件から始まる警察ものになっており、警察側の視点と、別視点の新興宗教に救いを求める男の2つの視点でストーリーが進行する作品となっている。

叙述トリックの名作として良く名前が上がっていたりする。

書籍情報

           
タイトル慟哭
著者貫井徳郎
出版社東京創元社
発売日1999年03月
商品説明連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。
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感想(少しネタバレあり)

作品全体として、とにかく丁寧に作られている印象を受けた。

物語はオーソドックスに犯人、追う側で展開され、そのいづれも「現在何を行っているか」が理解しやすいように描かれておりストーリーを掴みやすい。

文章も比較的軟らかく、普段本を読まない人でも手に取りやすいはず。シンプルで分かり易いミステリだと思う。

結末に賛否両論あるみたいだが、自分してはアリなのでは、と思っている。

賛否の否の意見は、後味が悪くなってしまった部分への評価だと思う。

確かにミステリとしてはすっきりしない部分はある。シチュエーション的にも「来るか…!?」と身構えていたのになにもなくて拍子抜けする部分があったりはした。

なんとかしてラストにもう一つ衝撃を持ってこれればより多くのミステリファンから評価されていたはのでは。だからこそ「勿体ないなあ」と感じるわけで。

じゃあ何でアリかって言あと、あの結末のお陰で、主人公に一切の希望が無くなったから。何だかんだで悲劇は人を惹きつける。

ミステリとしての喜びを求めるなら物足りないですが、一人の男に焦点を当てた悲しいヒューマンドラマとして見たら大成功だと思う。

過去に必死になって心を痛めながら尽力したのに、それが一切報われず、結局事件はお蔵入り。そして……とても悲しく、男の絶望は計り知れない。

どちらにせよ、結末を見れば悲しかったり、ちょっと気にくわなかったりする。それはこの作品が心に残る理由にもなる。

丁寧かつオーソドックスな作りなので、ミステリ入門としては持ってこいの一冊だと思う。

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