時計館の殺人(綾辻行人)感想

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書籍情報

           
タイトル時計館の殺人<新装改訂版>(上)
著者綾辻 行人
出版社講談社
発売日2012年06月
商品説明鎌倉の外れに建つ謎の館、時計館。角島・十角館の惨劇を知る江南孝明は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れる。館に棲むという少女の亡霊と接触した交霊会の夜、忽然と姿を消す美貌の霊能者。閉ざされた館内ではそして、恐るべき殺人劇の幕が上がる!第45回日本推理作家協会賞に輝く不朽の名作、満を持しての新装改訂版。
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目次

作品紹介

綾辻行人の館シリーズの5作目となる本作。

作品の舞台である「時計館」は、その名の通り数多くの高級時計と不思議な時計塔が置かれる奇妙な館だ。ある雑誌のオカルト企画という体で、出版社の人間と学生サークルの数名がこの時計館で過ごすこととなり、事件の幕が開ける。

感想(少しネタバレあり)

正直な所、館シリーズは総じて面白いのだが、シリーズを通して処女作『十角館の殺人』を超える作品はこれまでは無かったと個人的には思っていた。

が、今作は遂に処女作を超えたと思わせる作品であった。館シリーズはこれから「黒猫館~」「暗黒館~」と続くわけだか、5作目までの作品では『時計館の殺人』が一番面白いしと感じたし、良く練られている作品であると思う。

どの作品を評価するかは人によるだろうが、少なくともスケールの大きさではナンバーワンであろう。

600ページ超という著者のこれまでの作品の中でも過去最大のボリュームで語られる事件の顛末は圧巻のクオリティだ。

一度結末を迎えたかに見える事件を覆すのは綾辻氏の常套手段だが、今回のどんでん返しはこれまで以上に爽快であり、その爽快さを生み出すのは物語に散りばめられた伏線の回収が見事であったからに他ならない。

読者に少しづつヒントを与え、物語が繋がってく面白さを味あわせる。それでいながら、核心に迫るような事柄は食後のデザートのように取っておく。

おあずけを食らった読者は最後の最後でこれ以上ない驚きを手にすると同時に感嘆する事となる訳だ。これが実に気持ちいい。(余談だが、自分はこの爽快さを求めてミステリを好み読んでいる)

「時計館」ならではのトリックは館シリーズ最大級だが、これを更に面白いものとしているのが人物の設定付けであると思う。時計館にまつわる人物も、時計館自体も、どこか壊れていくものの儚さを感じさせる。

そのせいか惨い事件が起こったにも関わらず、悲しさが先にくるほどだ。綾辻行人がストーリーテラーとして評価されるのは、こういった部分にあるのだろう。

まさに名作。今後も語り継がれていく作品だろう。

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