人形館の殺人(綾辻行人)感想

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書籍情報

           
タイトル人形館の殺人 <新装改訂版>
著者綾辻 行人
出版社講談社
発売日2010年08月12日頃
商品説明父が飛龍想一に遺した京都の屋敷ー顔のないマネキン人形が邸内各所に佇む「人形館」。街では残忍な通り魔殺人が続発し、想一自身にも姿なき脅迫者の影が迫る。彼は旧友・島田潔に助けを求めるが、破局への秒読みはすでに始まっていた!?シリーズ中、ひときわ異彩を放つ第四の「館」、新装改訂版でここに。
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目次

作品紹介

十角館、水車館、迷路館とこれまでシリーズ三作を読んできたが、今作人形館はこれらの作品とは毛色が違う印象。館シリーズはいづれもとっつきやすさみたいなものがあったが、今作はそうじゃないかも知れない。

もともと「人形館」を所持していた男が自殺し、男の息子である飛龍想一が父の遺した「人形館」に引っ越してくる所からこの物語は始まる。

いままでのシリーズにおいても、もとの所有者が亡くなったことで「×××の館」に関わることが多かったので、これまでシリーズを読んできている方なら、またか、と頷くに違いない。しかし、そこで起きることは、これまでの館シリーズとは大きく志向が変わっている。

シンプルに読みやすい、面白い!と他の人に勧めるのであれば、まあ前作たちなのかなと。

感想(少しネタバレあり)

前作までの館における連続殺人事件は言わば復讐劇。抑えきれなくなった憎悪が惨事の引き金となった訳で、それ故計画も緻密に練られており、事件現場一つとっても見所があった。

それに加え展開も早く、読む者を虜にする勢いがシリーズのウリだった。しかし今作で起きる事件では、上記のような魅力ははっきり言ってしまえば無いのだ。

計算されつくした密室に心が躍るわけでもなく、目まぐるしく事件が起こるわけでもない。今作の犯人はゆっくりと、ネチネチと主人公である飛龍想一だけにプレッシャーを掛け続けるのだ。この「だけ」というのも今作の特徴だろう。

それなら、過去作と一線を画する本作の魅力は何処にあるのか。私は主人公、飛龍想一というキャラクタこそが本作の魅力であると思っている。この「人形館の殺人」は、飛龍想一の異常性を描いた作品だと言ってもいい。

彼が幼少から抱えていた心の闇は彼を完全に支配し、欺き、どうしようもない所まで堕としてしまう。真実を知った時の彼の絶望は計り知れないものであろう。なんと悲しい結末か。作中で彼岸花が咲く風景を、画家である彼が描くシーンがあるが、まさに彼には彼岸花のような儚さがあるように思う。

もちろん、どことなくチープに思えた殺人事件も、飛龍想一の過去についても、どんでん返しとともにしっかり締めてくれる。やっぱり綾辻行人は面白い。

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