バイバイ、エンジェル(笠井潔)感想

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笠井潔著『バイバイ、エンジェル』を読了。なんだか青春を感じる可愛らしい表題ではあるけれど、れっきとした推理小説だ。

書籍情報

           
タイトルバイバイ、エンジェル
著者笠井潔
出版社東京創元社
発売日1995年05月19日頃
商品説明ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広間で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに横たわっていた女の死体は、あるべき場所に首がなかった。こうして幕を開けたラルース家を巡る連続殺人事件。司法警察の警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに事件の謎を追う。ヴァン・ダインを彷彿とさせる重厚な本格推理の傑作、いよいよ登場。
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作品紹介

割とキャッチーなタイトルではあるものの、実はけっこう昔の作品で1979に刊行された作品となっており、著者のデビュー作でもある。

刊行当時のパリが舞台となっている。パリおしゃれ。行ってみたい。

感想(少しネタバレあり)

パリの資産家であるラスール家を中心に起きる殺人事件を、日本人留学生矢吹駆が紐解いていくのだが、この探偵役がなかなか面白い。

とにかくニヒルで捉えづらく、哲学的な台詞を並べまくる。説得力抜群の物言いで警察までも虜にしてしまう。魅力的なキャラクタだ。

この作品の見どころは、この矢吹の言葉一つ一つにあると自分は思っている。

物語の初めにおばさん姉妹の片割れが「首なし死体」となって発見され、ストーリーの重要ポイントになるのだが、この「首斬り」についての彼の解釈、また事件の解答が印象的であった。

首のない死体はミステリにおいてよく使われるネタで、大体は被害者のすり替えに理由があったりし、実際にこの作品においてもすり替えを利用した推理をする人間がいたりする。

しかし、本作ではそのような固定観念とも言える考え方を、哲学を駆使して皮肉った感があるのだ。日本人留学生さんの首斬り講義はなかなか興味深い内容になっているので、ほうほうと頷きながら読むことができるのではないだろうか。

物語ラストに用意された矢吹と犯人との掛け合いは一読の価値あり。どのように犯行を成し遂げたかとか誰がやったとかよりも、どのように事件を捉えたか、考えたかを重視する作品であるように思う。かなり異色なミステリである印象だった。

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